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2024.05.05
中小企業の事業継続について考える
新型コロナウイルス感染症の流行は、多くの中小企業の経営に悪影響を及ぼした。コロナ前後での状況から、中小企業の事業継続について考えてみる。
厚生労働省「雇用保険事業年報」による廃業率の推移をみると、2019年の3.4%から2020年は3.3%、2021年は3.1%と低下している。帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査」(2022年)の結果では、2022年の休廃業・解散企業の件数は5万3,426件となっており、2019年の5万9,225件から3年連続で減少している。
以下は「2021年版中小企業白書」掲載のグラフだが、日本における廃業率は4%前後で推移しており、2010年以降は低下傾向である。
コロナ後に廃業が減少しているのは、日本政策金融公庫等による特別融資や持続化給付金をはじめとする、さまざまな補助金・助成金などの資金繰り支援策が厳しい経営状況に陥った企業の事業継続を支えたことが功を奏していると考える。
経営形態からみると、「個人」の割合がコロナ前後で拡大している。
従業者規模からみると、廃業企業は4人以下の小規模企業の割合が80%を超えており、この傾向はコロナ前後で大きく変わらない。
この結果からも小規模企業が事業を継続することの難しさがみてとれる。しかし、これらのデータでは、創業してからどのくらい企業が生存しているかを知ることは難しい。
ここで少し古いデータ※にはなるが、「2006年版中小企業白書」の開業年次別・事業所の経過年数別生存率のデータを用いて、中小企業の生存率を考えてみたい。(※公的機関で公表しているデータで、小規模企業の生存率データはこれ以外見つからないため)
以下は白書記載の注意書きの抜粋になり、「製造業に限られ、また従業者4人以上の事業所に限定されている」データではあるが、法人/個人でデータが提供されており、分析に値する。
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開業年をある程度特定的に推定し、経過年別に生存率を観察する上では、毎年実施される調査を用いることが望ましい。この条件を満たす統計として経済産業省「工業統計表」を用いた。ただし、同統計の設計上、集計対象は製造業に限られ、また従業者4人以上の事業所に限定されていることに留意が必要である。
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以下に法人/個人の経過年数ごとの生存率を示す。
開業年によって生存率の数値は異なるが、同様の傾向にあり、法人よりも個人の方が圧倒的に生存率が低く、10年生存率は10%程度となる。
経過年数別生存率(開業年次平均)
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 | |
法人 | 79.6 | 69.7 | 62.7 | 57.1 | 52.6 | 48.6 | 45.1 | 41.7 | 38.6 | 35.9 |
個人 | 62.3 | 47.3 | 37.6 | 30.5 | 25.6 | 21.4 | 18.2 | 15.6 | 13.4 | 11.6 |
企業が生存するためには、さまざまな外部環境の変化に対応しながら、しっかり資金を確保していくことが重要である。しかし、中小企業はリソースに制約があるため、外部環境の変化に対応するためにも組織としての柔軟性を持つとともに、国や自治体の補助金・助成金などの資金繰り支援策を活用をすることで、廃業のリスクを低減できる。
当社としても、こういった企業の支援を強化するため、引き続き補助金等を活用するための事業計画策定支援に力を入れていく。
代表取締役 磯島裕樹